これは辛いぞ 新庄・蒜山スーパートレイル 2016


岡山県の山間で開かれる新庄・蒜山スーパー・トレイルに参加し てきた。
今回が1回目となるこの大会、どこにも”ラン”の言葉がない。
その通りに、山肌を切り開いたコースを這い上がり、滑り降りてき た。

種目はロング・コース70kmと、ミドルコース25km。私は当然ながら ミドル・コースへの参加。
こちらは制限時間は8時間で、累積標高差(トータルで上がる高 さ)は約1500m。
要するに、1500mの山に登り、降りてくるようなものだな。う〜む、 大丈夫だろうか。
参加者は280人ほどだった。

大会会場は新庄村役場近く。
村おこしの一環として立ち上げたようで、村長さんが熱い歓迎の 挨拶をして、スタートの合図をした

   ***

スタート地点は標高500mの地点。ここから1kmほど舗装路を走っ てからいよいよ山道に入る。
めざすのは850mの峠。勾配は急で、早くも息が上がる。
しかし、緩い昇りではまだ少し走るぐらいの元気さはある。会社の 9階の自室までエレベーターを使わずに毎日何回も上り下りして いた甲斐が、少しはあったか。

登り切って少し下りに入ったので、おお、一つ目の峠を越えたかと 思ったのだが甘かった。
すぐにまた前よりも傾斜のきつい昇りとなった。
なんだ、まだ峠には登り切っていなかったんだ。
このあたりの道はいわゆる林道という感じで、細いながらも人が 通っているという道。

この大会は山の中なのでエイドもほとんどない。
そこで、水や食料は必ず持って走るようにとの注意がされている。
私は500mlのスポーツ飲料と、エネルギー・ジェル、エネルギー・バ ー、それに塩、塩飴などをリュックに入れておいた。
しかし、次のエイドまで水はこれで足りるだろうかと不安になる。や はり1000mlは持って走るべきだったかな。

息が上がると、一息つきがてら、斜面の途中の立木に掴まって身 体を支えながら水を飲み、塩をなめる。
もう、どんどんと後続の人には先に行ってもらう。
とにかく目標は時間内の完走だけ。

やっと峠と思われる地点を過ぎて、今度は200mほど下る。
しかし下りは下りで膝に負担がかかりそう。
かかとでの着地をすると膝への衝撃が強くなるので、なるべく前の めりで下ればよいのだが、するとスピードがつきすぎて足がもつれ そうになって恐い。
どうしたらいいんだ?

   ***

下りきったところがやっとの第1エイドで8.5km。
時間はすでに1時間50分が経っている。
おにぎりを食べ、味噌汁をいただく。この味噌汁の塩分がたまらな く美味しかった。
コーラも飲み、ほとんど空になっていたペットボトルにはスポーツ 飲料を一杯に足してもらう。

係員のおじさんが、さあ、これからが本番だよ、と声をかけてくる。
隣で給水していた女性二人組が、山道を登るのはもう充分に堪能 したんだけどなあ、とぼやいている。

さてそこからの昇りは、これまでの勾配がまだ生やさしかったこと を、いやというほどに思い知らされた。
膝に手を添えて一歩一歩のぼる。
上を見るとどこまでも続く昇りに絶望的になるし、不安定な足元な のでとにかく一歩先だけを視て歩くしかない。
粘土質の土が剥き出しになった斜面は雨あがりで滑りやすく、両 側の木の枝に掴まって身体を持ち上げていく。

やがて生えていた木がまばらになり、空が開けてきた。
頂上に近づいてきたかなという期待が高まる。やれやれ。
やっと標高1050mの白馬山山頂にたどりつく。
第1エイドからここまででまた2時間あまりがかかっていた。ふー っ。

実は、第1エイドまでの8.5kmが1時間50分ぐらいだったので、第2 エイドまでの次の9kmも2時間半ぐらいでいけるのではないかと思 っていた。
そして残りの7.5kmに2時間。
すると、制限時間は8時間だが、6時間半ぐらいで完踏できるので はないかとの(捕らぬ狸の)皮算用である。
で、もう30分もすれば第2エイドにつけるのではないかと、期待して いた。
ところが・・・。

   ***

この大会には70kmコースがあり、3時間前にスタートしている。
そしてそのロングコースは途中から25kmのわれわれのコースと合 流してゴールまで行く。
その合流地点に係員のお兄さんが立っていた。ご苦労様です。
え〜と、第2エイドまであとどれぐらいですか?
ここからは5kmぐらいあるから、このペースだとあと2時間ぐらいか かるかな。

えっ、あと5km? すると、第1エイドからはまだ4kmしか来ていない の? こんなに疲れ果てているのに。そんなあ・・・。
てっきり第1エイドから7〜8kmは来ていると思っていただけに、が っかり。
あと30分ぐらいで第2エイドにつくだろうと思っていたのに、もうあと 2時間かかるって・・・。
疲労感が急につのってくる。がっかり。

そこからは下っては上りの繰り返しで、笹藪を切り開いた小径や、 水が流れてえぐれたような赤土斜面をすすむ。
特に辛かったのは下り。
傾斜が急なので、足をとられそうになっては踏ん張る。その瞬間に ふくらはぎが痙りそうになる。
こんなところで足が痙ったらその後走れなくなってしまうぞ・・・。

やがて70kmコースのトップの走者が後ろからやってきた。
うへえ、こんな急斜面を駈け降りているぜ。さすがに違うなあ。
それからも軽快な足音が近づいてきたかと思うと、走り下りてい く、駆け上がっていく。

さてこちらはというと、やはり足が痙ってしまった。痛い!
くーっ、とその場にかがみ込んで痙攣が過ぎ去ってくれるのを待 つ。その間に後ろから来た人が、あ、痙りましたか。お大事に、な どと追い越しながら声をかけてくれる。
なんとか痙攣が治まって、またよろよろと斜面を昇り降りする。

結局、計3回足が痙った。くーっ、痛い。
実際に急斜面で滑ってお尻が泥まみれにも2回なった。やれや れ。

やっと標高1060mの笠杖山山頂に着く。
そこからは上りはなくなったのは好いのだが、これまで以上の急 斜面の下りが続く。
上から見下ろすと傾斜が45度ぐらいあるのじゃないかと思うほど。
高所恐怖症の身としては、転げ落ちそうな角度の下りは下を見た だけで足がすくむ。恐いよお。

斜面の所々に生えている木につかまりながらおそるおそる下る。

   ***

下ってくだって、やっと着いた第2エイド。時間は6時間が経過して いる。
やはりあの係員のお兄さんのところからの5kmには2時間近くがか かっていた。やれやれ。

バナナを食べ、ぶどうを食べる。ふーっ、生きかえるなあ。
ペットボトルに水を足してもらって、さあ、残りを頑張るか。

と、係のおばさんが、あとゴールまで5kmを切っているから頑張っ てね。
えっ?5kmを切っている? 
この第2エイドは確か17.5km地点で、まだ7.5km残っているはずだ けれど?

確認すると、第2エイドの設置位置が当初の予定より後ろへずれ て、ここは20km過ぎだとのこと。
なあんだ、そうだったのか。どおりであの山の中のお兄さんのとこ ろまで時間がかかったわけだ。
スタート前にエイド位置変更の告知掲示板を見なかったからな あ。

   ***

しかし、こうなると俄然元気が出る。
しかもここからは舗装された道になる。おまけにゴールまでもう登 りはないという嬉しい言葉。
第2エイドからゴールまで2時間は要るだろうと思っていたのに、あ と30分ぐらいでゴール出来るぞ!

痛む足を引きずってよろよろと走り、なんとか6時間23分で完踏出 来た。やれやれ。

参加者名簿を見ると、私より年長の方は1人しかいなかった。
部門は40歳以下、40歳代、50歳以上の3つに分かれているのだ が、50歳以上の部でみると、83人中43位だった。
自分より年下の人に交じってよく検討したというところか。

しかし、私より年長のただ一人の方は、なんと82歳だった。
そして私より7分早くゴールされていた。すごい人がいるものだ。 

疲れた身体で濃い塩分の担々麺の遅い昼食を食べ、近くの温泉 に入って身体を休ませた。来年、また出る?
あの急角度の下り斜面が恐いからなあ。どうしようかなあ。



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