嵐の村岡 44km 2012


 ”東の野辺山、西の村岡”と並び称される山岳ウルトラの「村岡 ダブル・フル」。
 メイン・コースはもちろん88kmですが、とてもそんなコースは走れ そうにない。ということで、温和しく44kmコースへエントリーをしまし た。
 といっても、フル・マラソンよりも長い距離で、おまけに550m、 350m、250mの3つの峠越えがあります。
 制限時間は9時間。果たして私の足は持つのでしょうか?
(ちなみにこの大会では、余りにもコースがきついという理由で当 初はなかった100kmコースも、その後の要望の多さから設けられ ています。いったい、どんな人が要望するんや?)
 
 さて、コース近くに前泊したのですが、問題は接近している大型 台風17号。
 なんと、大会当日に近畿地方に最も接近するという天気予報で す。降水確率は90%以上。どうすんだ?
 とにかく雨の大会には、萩往還70kmでのリタイアという苦い想い 出があります(翌年の晴れた日の大会で完走してリベンジしました が)。
 雨だったら嫌だなあ。台風の強風にあおられての横なぐりの雨 なんて、とんでもない話だなあ。
 不安とともに眠りに就きました。

 朝6時半起床。外は案の定の雨ですが、それほど強くはありませ ん。
 ニュースでは午後3時頃に近畿地方に再接近と伝えています。こ のあと、どれぐらい強くなるんだろ? 
 88kmコースや100kmコースの人たちは明け方前からすでに走っ ているはずです。とにかく行ってみるか…。

 受付会場には薄いレーンコートを被ったランナーで一杯です。な かにはもう濡れてもかまわんぜといった感じでなにも雨具を着て いない強者もいます。
 44kmコースは、受付会場からバスでスタート地点の山田小学校 まで送ってくれます。
 .小学校の体育館には雨をしのいでスタートを待つ人で一杯で す。ストレッチをして時間をつぶします。

 熊よけの大きな鈴を一つずつもらって、10時にいよいよスタート です。
 このころの雨はまだ、車の間欠ワイパーではちょっと間に合わな いかなといった程度の小雨でした。これ以上激しい雨が朝から降 っていたら、走るの止めていたもんね(苦笑)。

 44kmコースは620人の参加と言うことでした。
 最初にゆるい下りを1.5kmほど走って引き返してきます。距離あ わせのためなのでしょう。坂道を降った雨水がかなりの勢いで流 れています。靴はすぐにびしゃびしゃになりました。

 ふたたびスタート地点を通り過ぎると、いきなり、なんだ!この急 な上り坂は!
 和佐父峠への550mの上り坂です。とても走れるような傾斜では ありません。皆、黙黙と早足で歩きはじめます。
 しばらくして傾斜が少し穏やかになると、走りはじめます。この繰 り返しで、9km先の峠頂上をめざします。
 ビニール製のレーンコートは、雨を防いでくれますが風も通しま せん。コートの中は汗でびっしょりです。もう雨で濡れているんだ か、汗で濡れているんだか…。

  このあたりで宇宙人の衣装のランナーと前後しはじめました。
 全身タイツのような着ぐるみで、顔には結構不気味な宇宙人の お面を被っています。ちょっと小柄な女性のようです。
 この宇宙人、とにかく歩くのが速い。坂が急になり歩きはじめる と抜かれます。坂が緩くなって走っている区間で抜きます。歩き区 間でまた抜かれます。
 延々とこの繰り返しをしていました。激しいバトルです(笑)。

 スタートして6km地点に、山道のT字路がありました。ここで 66km、88km、100kmコースのランナーと合流します。100kmコース の人はすでに65kmを走ってきていることになります。うへえ。
  やっと峠頂上に着きました。激しい上りの9kmで1時間25分。ん、 上出来じゃないの。

 さてここからは5kmで550mを下るという激しい下りになります。油 断をすると前のめりに転びそうになりますから調節をしながら駆け 下ることになります。
 これがかなり太股に負担をかけていることが一歩ごとに感じられ ます。だいたいは下りで足をやられるんだよなあ。
 とはいっても、止まるわけにもいきませんから、ええい、後半が どうなろうとも、とにかく今は行くっきゃないっ!

  坂を下りきっての14kmエイド。ここでちょうど2時間でした。
 すると見覚えのあるピンク色の王冠を被った女性が…。パートナ ーOさんの応援に来ているHさんでした。100kmコースに出ているO さんはまだ到着していないとのことでした。
 このエイドではそうめんを食べ、梨やオレンジを食べ、あとはい つものように梅干しを食べました。雨の中をエイドの皆さん、ご苦 労様です。

 さて再び上り坂が始まります。
 やがて、このコースの名物となっている長楽寺へ寄ります。コン クリートの打ちっ放しの床の広いお堂には、但馬大仏と呼ばれる 巨大な釈迦三尊像が安置されています。その本堂内を一周する のです。
 帽子を脱いで参拝。そのあと三尊像の後ろをぐるりと走って来ま す。こんなマラソン・コースは日本中で他にはないでしょう。
 嬉しいことに、お堂の出口付近に机と椅子がずらりと並べてあ り、餡ときな粉のおはぎ、それに漬け物、温かいお茶がふるまわ れます。美味しくいただきました。

  このあたりでは雨はもう本格的な降りです。
 乾いたタオルをビニール袋に入れて持っていたのですが、それ で身体を拭くことはしませんでした。一度身体を快適な状態にして しまうと、ふたたび雨の中に走り出すのはかなり辛く感じられるか らです。

 まだまだ続く上り坂。
 このあたりで、あきりんさんですかと、後ろから追いついてきた男 性に声をかけられました。
 この大会のゼッケンには、ナンバーが印刷された下のスペース にニックネームや出身県を自分で書けるようになっているのです。 で、私は「あきりん」と大書していたのです。
 やはり初めてこの大会に参加したというその方はしっかりしたペ ースです。次のエイドまでの5kmほどを話をしながら一緒に走りま した。
 なんとか暗くなる前にゴールしたいですね。ええ、今ごろだと6時 にはもう暗くなり始めるでしょうね。
 その方は50歳ちょうどということでした。昨日は残業があって、帰 宅して寝たのが午前2時とのこと。それで今日はウルトラを走って いるのですから、さすがに若さです。

 2つめの峠の頂上の前に44kmコースだけは3kmほどのところを 往復します。これも距離あわせのためなのでしょう。
 で、やっと頂上のエイドに着きました。25km地点で時間は3時間 45分。このペースで最後まで足が持てば、7時間ぐらいでゴールで きるかな、大したものだな、と、捕らぬ狸の皮算用です。
 このエイドで再びHさんと遭遇。みるとOさんもすでに到着してい ました。後で聞いたところでは、Oさんはこの難コースの100kmを11 時間で踏破したそうです。早い!
  
 さて次は7kmのあいだに350mを下ります。
 傍らを雨で増水した谷川が轟々と流れ、ところどころでは滝のよ うになっています。天気のいい日に走ったら気持ちがいいだろうな あと、冷えた身体で思います。
 いくらレーンコートを着ていても、襟足から入ったりした雨で身体 中はもうびしょ濡れなのです。

 もうこのあたりではほとんど思考停止状態でただただ走っていま したから、コースに何があったのかもあまり覚えていません。
 細い峠道の連続なのですが、ときおり小さな集落があったりしま す。そんなところでは家々の軒先で村の人たちが応援してくれま す。励まされます。

 下りきったところの32kmエイド到着が4時間40分。やれやれ。
 このエイドの名物はお好み焼きです。ところがありません。あ れ?売り切れですか?と尋ねると、もうじき焼けるよ、とのこと。で は、と待つことしばし。焼き上がったばかりのお好み焼きは、ソー スの甘辛さが疲れた身体に染み渡り、この大会一のおいしさでし た。

 くだんの宇宙人とは未だ抜きつ抜かれつしています。
 走っている間にわずかに追い抜くのですが、エイドでだらだらと 休んでいると追いつかれて、彼女はすぐに出発していきます。で、 途中で抜いて、また次のエイドで追いつかれて・・・。

 雨が激しくなっています。エイドのテントから出る勇気がくじかれ そうになります。
 時間は午後3時前で、予報では台風が近畿地方に一番接近して いるころです。雨がきつくて気の毒だねえ、とエイドのおじさんが言 います。いやいや、エイドの方々も台風の中をご苦労様です。

 いよいよ最後の峠越えになります。ここは4kmで250mを上ります から、その勾配は疲れた足にはかなり堪えます。左太股の前面 と、右太股の付け根のあたりが一歩ごとに痛むようになってきまし た。
 峠を半分ほど上ったあたりから、道に沿ってちょうどゼッケン大 の木札がずらっと立ち並んでいます。なんとそれは出場者全員の ひとりひとりの名前に応援メッセージが書かれた木札でした。ゼッ ケン番号順に延々と山道に沿ってたてられています。
 私のものもありました。書き添えられたメッセージは、”ゴールは 近づいているぞ、頑張れ”でした。

 残り4kmの地点でやっと頂上に着きました。最後のエイドです。 時間はちょうど6時間。私にしてみればここまで大健闘です。
 エイドのおばさんに確認すると、あとはゴールまで下りしかない よ、大丈夫だよ、との嬉しい言葉でした。

 さて前半からの、くだんの宇宙人との抜きつ抜かれつですが、ま だ続いていたのです。この最後のエイドでまた追いつかれました。
 こちらがのんびりとしているうちに、宇宙人はさっさと走り出して いきます。
 しかし、ゴールまで2kmの地点で宇宙人を抜きました。ここから はもうエイドはありませんから、そのままの逃げ切りとなりました。 ま、数分の差でしたが(笑)。

 残り1kmあたりで村岡の集落に戻ってきました。傘をさした応援 の人が口々に励ましてくれます。
 泥だらけでぬかるんだ村岡中学校の校庭のゴールにばしゃばし ゃと走り込みました。
 ゴール! ちょうど6時間半での完走でした。
 9時間かけて完走できるかな?と心配していたのですから、よく やった!と自画自賛です。

 やれやれと、まずは温かい豚汁をもらいます。ぜんざいもありま した(嬉)。
 汗を拭いて、そのまま車で近くのハチ北温泉へ向かいました。
 冷えて節々が痛む身体を湯が包みこんでくれます。いやあ、極 楽極楽。
 温泉を出るところで、ちょうどやってきたHさん、Oさんとまたばっ たり。次は12月の加古川マラソンでお会いしましょう。

 山岳マラソンの雄の”村岡”でしたが、私が走ったのは何と言っ ても一番甘い44kmコースです。真骨頂は88kmコース、100kmコー スなのでしょう。
 今回のコースの坂の辛さをこれまでの大会と比べると、四万十 川60km < 村岡44km < 萩往還70km という順番でしょうか。

 今回の反省点は、少し頑張りすぎたかな、ということです。なにし ろ雨に濡れて辛かったりするので早くゴールして暖まりたいという 一念がありました。
 エイドの充実した大会でした。次回には、ぜひ晴れた日にもう30 分ぐらいゆっくりと時間をかけて楽しみながら走ってみたいという 気持ちです。



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