未刊詩編

切手帳

あちらこちらで 無駄に濃いものがたゆたっていた
木陰からの合図ちらちら 今度は蛇に生まれ変わって

片肌をあらわにすれば 足下には渓谷が見える
たいへんが やっぱり太股でまたぎ超していく

勝負人といわれてきたが 近頃では休みがちになってしまった
すみません 理想のわたしの立場はどのあたりでしょうか

昨日からの手紙のチェックがまだ終わらない
無茶をしたので とつぜん心が引いていく

眼にとびこんでくる赤いポスト
緑の季節に身体を証拠として投げだす

硬い毛がかっぽれ ここよりは全部口先ばかり
尋ね人の紫色を警告して財布をまさぐっている

尻尾はまず網目模様 かすむ魚が棲む季節を知れば
ときめきも遠く去って ほんほこりと明かりがともる

店先で口ごもってしまう あんなに林檎が好きだったのに
必要なのは渓谷でも湖でもない 蛇行する順番は次だったのに

暮れにまよう 窓のむこうでは夕焼けがにらみつけている
そこには限られたものだけがあって おや わたし印の空だ



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