未刊詩編

焼酎と気弱な人と友達

ビールと焼酎をいれた二つのジョッキをはこぶ 
弟にどちらがいいかと尋ねる 
そこは風が吹きぬける岬だ
ビールがいいと弟がこたえ 
隣にいたナカモト君が 僕は焼酎がいいという 

君はジュースを手にしているじゃないか 
いや 僕は焼酎も飲むよ 
そうか 君は焼酎も飲むのか 
自分で飲もうと思っていた焼酎を
なにも思っていない装いでナカモト君にわたす

さあ これで僕たちは仲間だよ
そうであるならば 次には
遠いところまで帰っていく弟のために
ナカモト君と二人で書類をとりにいかなければならない

席を外して戻ってみると 
先刻まで隣の席にいた人が焼酎のジョッキを持ち去ろうとしていた 
うっかり間違えただけだよ 

呟いただけで背を丸めた気弱な人が去っていく 
いつのまにか弟も旅立っていて
さあ 残された僕たちはもう友達だよ

本当は あの気弱な人も友達だったのかもしれない
それにしても 
わたしはなにを飲めばよいのだろうか

岬の先には遠いところしか待っていない


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