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ここ3年間は9月には村岡ダブル・フルを走ってきた。
昨年は66kmコースのリベンジも果たしたので。今年は何か別の大
会へ。
ということで見つけたのが三原・白龍湖トレイル・ラン。
中国山脈の山の中のかなり厳しいコースのよう。
我が国のトレイル・ラン大会の本が出ている。
全国の大会の難易度が紹介されたりしているのだが、それによれ
ば今春に走った「正木山トレイル・ラン」は初級となっていた。
この「三原・白龍湖トレイル・ラン」は中級。大丈夫かなあ。
(もちろん上級と紹介されているようなコースは私ごときものが走
れるものではない。断言。)
ということで、20kmのショート・コースに申し込みを・・・、あれ? す
でに1000人の定員はオーバーで締め切っていた。
定員500人の37kmのロング・コースはまだ受け付けていた。
えっ、ロング・コース? こんな厳しいコース、とても無理そうだが、
仕方がないか。
***
朝4時に起床。軽く朝食を済ませて、いざ。
高速道路も空いていて、1時間半ほどで大会場に到着。
ショート・コースのスタートは2時間後なのでまだ会場も空いてい
る。トイレも問題なし。
さて7時にスタート。どうなることやら。
とにかく完走だけが目標なので、最後尾からゆっくりとスタートす
る。
はじめの2kmは舗装道路をゆっくりと上る。これぐらいはまだいけ
るよなあ。
天気は上々。気温も今日は26度ぐらいまでしか上がらない様子。
雨は3日前に降ったきりなので、山道もぬかるんではいないはず。
天候的には恵まれているよなあ。
いよいよ山道に入り、一人ずつしか歩けないような急斜面を上り
始める。
皆、黙々と上り続ける。一人だけ遅いと後ろの人に迷惑をかける
なあと、必死に前の人と同じスピードで上がる。
後半になると太股が堪えるだろうことが予想される。
なにしろ、帰りはこの急斜面を足を滑らせないように踏ん張りなが
ら降りなければならない。嫌だなあ。
この大会ではエイドも少ない。車が通れない部分が大半なので、
水が運べる地点も限られる。
ところどころで舗装道路が通じている公園やお寺を通過する。
そういったところの3箇所、往復で6箇所の普通のエイドがある。あ
とはところどころで水を置いてくれているようだ。
ということで、くれぐれも念を押されていたのが、必ず水を500ml以
上携行するように、ということ。
ということで、今日はウルトラ・ランニング用のリュックを背負って
いる。
スポーツ・ドリンク500ml、伯方の塩の携帯用小袋(これはしまなみ
海道遠足(とおあし)のときにもらったもの)、それにエネルギー・ゲ
ルやらブドウ糖タブレット、などなどを入れている。
***
なんとか240mを上がり、そこからは細い林道を走る。
細かく上っては下り、まったく平坦という場所はない。トレイル・ラン
だからこういうことだな。
で、はじめの5km通過が50分。あの上りがあった割にはいけてい
る。
ロング・コースの制限時間は8時間。
ということは5km1時間のペースでいければ少しおまけが出ること
になる。
このペースでどこまでいけるのだろうか。
と、舗装道路へ出て数百m走った8km地点でエイド。
ここは観光農園の入口近くということで、嬉しいことに梨や葡萄が
置いてあった。コーラも置いてある。いただきます。
そこからはトレイル・コース。
山肌に切り開かれた細い道をうねうねと走る。いたるところに木の
切り株が残っているので躓かないように注意しなければならない。
誰もほかには通ることもないような道(?)なので、この大会のた
めに整備したのではないかとも思える。すごいなあ。
何カ所かで2mぐらいの崖のような所を昇り降りするところがある。
ロープが垂らしてあって、そのロープを使って崖面に足を踏ん張っ
て昇り降りしなければならない。
これはまるでTV番組の「SASUKE」じゃないか。
腕力のない女性にはきついだろうなあ、体重が80kg以上あるよう
な人もきついだろうなあ、と思ったりする。
10km通過が1時間40分。この5kmも50分ほどでいけている。大し
たものだと自画自賛。さらにトレイル・コースを走りつづけて少し下
ったところが棲真寺エイド。
ここは帰りには最終第4関門になっているところ。果たして時間内
に戻ってこられるだろうか?
***
ここからが急勾配の下りのトレイル・コース道。
とても走れるような勾配ではなく、おそるおそる降りる。
帰りはこれを上る! えっ、想像しただけで気が遠くなりそう。
ということで480mを下って平地に戻ってきた。
山陽本線も通っていて、広い沼田川を渡る。
すると、この辺りでランナーが来ます。注意してください、と係員が
叫んでいる。
なに、もう往復してきたランナーがいるのか。すごい。
あとで調べてみると、毎年の優勝者は3時間あまりでゴールしてい
た。すごい、の一言に尽きる。
さて、ここからは沢に沿って450mぐらい上らなければならない。
急流に沿ったトレイル・コースで、ここからがいよいよの本番だっ
た。
岩がゴロゴロとしている細い沢道を少しずつ上がる。
すると往復してきた早いランナーが上からやって来る。当然彼らに
敬意を表して身を山肌に寄せて道を譲る。ありがとう、頑張って、
と言いながら彼らは駆け下っていく。
彼らはこんな悪路を駆け下るのか!
所によっては岩によじ登る感じで越えていく。太股がやられるな
あ。帰りはどうなっているのだろう、心配。
流れを岩を飛びうつりながら渡るところもあった。
私はバランス感覚が悪い。こういうのは苦手。なんとか水に落ち
ずに渡る。
しかし、これで雨の後で水量が増していたら、どうやって渡ればよ
かったのだろう?
コースを見失わないように、森の中の木立の所々に目印が結び
つけられている。
ときおり、主催者からの応援メッセージが書き添えられている。
「女王滝まで一気に上がるぞ」とか、「辛い? 気のせい、気のせ
い」とか・・・。
***
沢を登り切ったあたりが15km。
ついにこの5kmには1時間10分がかかってしまっている。これまで
の貯金は一気になくなってしまった。
そこからは山道の上り下りがつづく。
勾配が急なのでいたるところに丸太で土留めをした階段がある。
上っても上っても階段。
と思ったら、今度は下り階段。せっかく上ったのだから下らなくても
いいのだけれどな。
次はまた上りの階段・・・。
この階段地獄の3kmぐらいがとにかく辛かった。
嬉しかったのはこの辺りはループ上になっていて1回しか通らない
こと。好かったあ。
この辺りで飛行機の発着音が聞こえて、広島空港の近くに出る。
なんとぽっかりと舗装道路に出る。
久しぶりに足元を気にせずに走れる。しかし、膝はすでにがくが
く。
20km地点通過が4時間10分。この5kmもあの階段地獄のために1
時間20分かかっている。
これは完走どころか、関門制限通過も危ぶまれてきたぞ。
この後は沢下りが待っている。
行きはよじ登ったりした岩が転がっているコースを、今度はすべり
落ちたりしないように慎重に降りていく。
踏ん張るために太股の筋肉を酷使はするものの、上りよりは楽だ
ったかな。
一番低い地点の沼田川の橋まで戻ってきた。
さてここからは480mを上らなくてはならない。疲れたなあ。
***
上りの途中の26km地点の棲真寺エイドに戻ってきた。
最終関門時間の16分前だった。やれやれ。
残りの11kmに2時間10分が残っている。1km11分あまりでいけれ
ばなんとか時間内完走か。
しかし、この疲れ具合、残っている行程の急勾配を考えると、かな
り厳しい。
エイドのおじさんが、もうこれで関門はないから時間オーバーして
も最後まで走れるよ、と励ましてくれる。
そうか、関門に引っかかればあっさりと止めることもできたが、こう
なれば最後まで行くしかないか・・・。
ここでリタイアするらしい人がかなり椅子に座ったりしている。
送ってくれる車を待っているのだろう。もう、それは見ないことにし
て・・・。
さらに上り続けてから、山肌の道を頑張る。
しかし、上り勾配部分ではもはや走る体力はなく、よろよろと歩く
のみ。
少しでも平坦になったり下りになったりすれば、よろよろと走る。
それでも1km13分でも走れていない(距離表示は親切なことに1km
ごとなのです)。やはり駄目かなあ。
TVであるプロのトレイル・ランナーが言っていた言葉は、トレイル・
ランは辛くなってからが楽しいんだよ。
本当かよ。辛いだけだぞ。
***
30km地点の観光農園エイドにたどりつく。
嬉しいことに梅ジュースが置いてあった。酸味が疲れた身体に染
みわたるよう。これは効くなあ。
エイドのおばさんが、こちらも飲んでみて、とプラム・ジュースも勧
めてくれる。こちらは柔らかい甘さで癒されるようだった。
この時点ですでに6時間56分が経過。残り7kmに74分しか残って
いない。もはや絶望的。
しかもこの大会は、去年まではロング・コースが35kmだったのだ。
面白いトレイル箇所を付け加えました、ということで、今年は2km
距離が長くなったのだ。それで制限時間は同じ8時間。
私のようなぎりぎりランナーのことを考えたら、そりゃ制限を8時間
30分ぐらいに延ばすのが人情というものだろうに・・・。
林道をとぼとぼと歩いては、よろよろと走る。
このあたりはまったくの一人旅。途中で抜いた人が一人うしろにい
るぐらい。
やがて240m下る急勾配にさしかかる。
上りも大変だったが、下りもすごい。おそらく雨が降って水が流れ
る都度に土が削り取られていったのだろう急斜面の至るところに
大きな岩がむきだしになっている。
こんなところで足を滑らせたら一気に転げ落ちてしまう。
転がり始めて下手をすれば、岩に頭をぶつけてしまいそう。
こんなところで誰にも見つけてもらえずに気を失っているのも嫌だ
な、と、慎重に降りる。怖い、怖い。
やっと下ってきて35km地点。なんと、ここでちょうど8時間経過とな
った。
ほうれ、みろ。35kmなら8時間で完走できていたのに。ぶつぶつ。
***
最後の2kmはゆるやかな下りの舗装道路。
足下も心配なくなったので、ゆるゆると走る。
やっと帰ってきた。大会の係の人がゴール手前の両側に並んでハ
イタッチで迎えてくれる。なんて好い大会なんだ。
この2kmは1km8分で走って、8時間16分でゴールだった。
計測チップを外してもらって、やれやれ、と着替えの場所に戻ろう
とすると、係の人が、完走証をお渡ししますから、と言う。
えっ、私は制限時間オーバーですよ。それで完走証くれるの?
はい、と手渡されたのは、ちゃんと8時間16分のゴールタイムが印
字された完走証だった。なんて好い大会なんだ。
疲れ切った身体で、居眠り運転をしないように気をつけて、尾道ラ
ーメンの遅い昼食を取って帰宅しました。
好い大会でした。でも、あんな辛いコースを、二度と走る気はしな
いぞ。
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