悪戦苦闘の宮古島遠足(とおあし)2011

1.スタートまで

初めての宮古島ウルトラ遠足(とおあし)です。
天気予報では、週末の宮古島は寒波が訪れて寒く、降雨確率は なんと80%と、まったく嬉しくない情報です。

前日に那覇を経由して宮古島へ。
受付会場ではTさんと3年ぶりに再会しました。
Tさんとは私が初フルをホノルルで走った前夜に一緒に夕食をとっ て以来のおつき合いで、「淀川フル・マラソン」や「しまなみ遠足」で もご一緒しています。
なんとネクタイにスーツ姿のTさんは、今日も宮古島へは仕事で来 ている、出張のついでにウルトラを走るんだ、とのこと。へえ〜。

レンタカーを借りているから、といってTさんが、コース前半の下見 ドライブをしてくれました。
その夜は、宮古島遠足は何度も走っているTさん、Uさん、TUさん との食事会でした。
宮古島の郷土料理をつまみながら生ビールをグビグビ。
明日は午前9時ぐらいまでは雨らしいよ。カッパがやっぱり要るか なあ。
いろいろとコースの情報ももらいます。エイドは必要最小限度です よ。ふ〜ん。

さて、夜10時に就寝して午前2時半に起床。
ホテルの窓から外を見ると、激しい風と雨。あちゃあ。

3時半にTさんとUさんが迎えに来てくれて、途中でTUさんを拾っ て、4人でスタート地点の東急ホテルへ向かいます。
300円ぐらいで買ってあった使い捨てのカッパを着込みました。他 のみんなもカッパを着込んでいます。

まだ暗いスタート地点はがやがやと、独特の高揚感に包まれてい ます。
と、そのうちに、風はあいかわらず強いものの、雨が止みました。 お、嬉しいな。
この大会の主催者の海宝さんがビニール袋を手にして、ゴミはあ りませんか、ホテルの前を汚さないようにね、と言いながら回って います。

ところがスタート直前になって、また大粒の雨が降り始めました。 あちゃあ。
この大会の参加者募集は500名でしたが、人気のある大会で800 人ぐらいが申し込み、結局772人がスタートしたとのことでした。

2.〜10km

午前5時、スタート。
街灯もない道です。各自が手にしたライトの明かりがちらちらと動 いています。
私も百円ショップで買ってきたLEDライトを手にしています。
これがなければまったく足元の確認ができません。毎年、何人か のランナーが暗いうちに転倒して怪我をしているとのことでした。
昨夜からの雨で、あちらこちらには水たまりができています。
ライトで照らしていても、よけるのが間に合わずに足を突っ込んで しまいます。
もう靴はびっしょり。これがあとで大きな災いになりました。

今日の出で立ちは、しまなみ遠足の半袖Tシャツにロング・タイツ、 アーム・ウォーマーにウエスト・ポーチです。
今日の目標は、とにかく時間内(16時間)完走が目標です。
しかし、私が完走したことのある「しまなみ遠足」よりはコースがき ついよ、と、両方を走ったことのあるHさんからは聞かされていまし た。
そのしまなみでの私の記録は15時間30分ぐらいです。そのしまな みよりきついと言うことは・・・。危ういなあ。
おまけにこの強い風です。危ういなあ。

この大会の距離表示は5kmごとです。
最初の5km通過が38分と、まずまずの目論見通りです。
ペース設定としてはフル・マラソンの距離通過を5時間半、中間地 点通過を7時間としています。
そのためには、中間地点までは各エイドの休憩を入れて各5kmを 40分のペースで行きたいところです。
暗いので何も見えません。足音だけが響きます。雨の中を黙々 と、ばしゃばしゃ。

10kmあたりで宮古島の中心地近くの平良港にさしかかります。
幸いなことに、このあたりで雨が止んでくれました。
しかし、風が強く寒いのでカッパは着たままです。すると、雨に濡 れているのか、汗で濡れているのか、判らないような状態です。
寒くなるからあるといいかもしれませんよ、と、Uさんがわざわざメ ールで知らせてくれたアーム・ウォーマーを出発の前日に購入し てきましたが、そのアーム・ウォーマーもぐっしょり濡れています。
ということは、やはり汗がこもっているんだろうなあ。
雨に濡れた手袋はもう冷たいばかり。はずすと強い風にさらされ てもっと冷たくなりそうです。
もう、暑いんだか、寒いんだか、判らないような状態です。もう、や けくそな状態です。

3.〜20km

島の形はおおよそ直角三角形をしています。
スタートは島の左下の部分(ここが直角の角です)で、三角形の一 番短い辺を北上して15km地点です。
ここを1時間55分で通過。設定通りです。よしよし、健闘してるじゃ ないの。

時間は7時となり、次第に明るくなってきて、ライトが要らなくなって きました。
さてここからは北側に突きでた西平安名岬(にし・へんなざきと読 みます)という細い半島のような部分を往復します。
そして再びここまで戻ってくると、ちょうど42kmとなります。何時頃 にここまで戻ってこられるかなあ。

あたりには人家は全くなく、両側とも延々と続くサトウキビ畑です。 ところどころで刈り取ったサトウキビが道端に積み上げられていま す。
歩道を走って下さい、という注意がされていましたが、道を走る車 もなく、車道の端を走っている人も結構います。淡々とした道がつ づきます。
あとから思えば、それほどきつい坂もない淡々とした道がどれほ どありがたいものだったか!

4.〜30km

20kmを2時間35分で通過して、23kmあたりから最初の難関、池間 大橋にさしかかります。
これは島の北にある池間島へ渡る1400mの橋で、船の航行のた めに中央部がかなり高くなっています。
遮るもののない橋の上は激しい北風です。走るどころか、歩くにも 風で身体が押し戻されそうな強い風です。さすがに走っている人 は誰もいません。

身体を前屈みにして、なるべく風に当たる面積を減らすようにし て、とにかく橋の上を歩きます。
当然のことながら帰りはものすごい追い風となります。
早くも島を1周して戻ってきている人は、もともと早い人ですが、プ ラス追い風で、それはそれはすごいスピードですれ違っていきま す。

やっと橋を渡りきって島に入ると風は弱まり、やれやれと、またゆ っくりと走り始めます。
1周6kmぐらいの島ですが、道はうねうねと上っては下り、平らなと ころがありません。
島だからなあ、仕方ないなあ。

ところがこのあたりで左足裏、土踏まずの前あたりに違和感を感 じ始めました。
焼けるような感じ。これは! そうです、マメができてしまったようで した。
おそらくは、雨に濡れた靴下がさっきの橋の上の早足歩きでこす れていたせいでしょう。まずいなあ。
歩くと、どうしても土踏まずの前方で蹴りますから、痛みが増しま す。
ゆっくりと走っていると、私の場合はほとんど足を蹴っていないらし く、それほど痛くありません。おいおい、歩くこともできなくなってし まったぞ。

このあたりで小学生らしい男の子2人を連れて走っているお父さん らしい人と前後しました。
お父さんがしきりに声をかけて、それなりに子ども達も走っていま す(あとでの情報によると、今大会の参加最年少は9歳とのことで した)。
しかしなあ、あんな小さいうちからウルトラを走ったりして、身体の 成長に悪影響は出ないのだろうか?と、他人事ながら少し心配に なりました。
ま、何歳の人にとっても、ウルトラ・マラソンなんて、身体にとって 好いわけがありません。

5.〜42km

1周してきて島の入口の戻ってくると32kmエイドです。
ここまでカッパを着て走っていたのですが、もう雨も降りそうにない し荷物にもなるので、エイドのおじさんに、これ、捨てておいてもら えませんか、と頼みます。

にやっと笑ったおじさんは、みんなここでカッパを置いていくんだけ れど、夕方になったら冷えるから後悔するぞお、と冗談交じりに脅 します。
見ると、たしかに使い捨てカッパが沢山置いてありました。
そのおじさん、私のしまなみTシャツを見て、でも、お兄さんはしま なみも走っているベテランさんか、じゃあ脅しても通じないな、と笑 いながらカッパを受け取ってくれました。
いやあ、ベテランじゃないのだけれど、私は備えとして、ウエスト・ ポーチにちゃんとポケッタブルのウインド・ブレーカーを入れている のです。
薄手のものですが、これは日暮れてからは大いに役立った代物で した。

池間大橋の戻りにさしかかりました。
今度はすごい追い風です。風で身体が前へ吹き飛ばされそうにな りますから、転ばないようにするために、必死になって前へ、前 へ、かなりの速さで走ることになります。
楽なのだか、楽ではないのだか、ちょっと迷うようなところがありま す。
向かい風でこれも必死になって歩いている行きの人が(さっきまで 私もそうだったのですが)、羨ましそうな目でこちらを見ている気が します。

橋を渡り終えての35kmが4時間35分。
およそ5kmを40分のペースでここまでは来ています。
風の影響を考えればよくやっています。ただ、この頑張り具合で後 半にどれだけの余力を残せているかが問題です。

岬への分岐点に戻ってきて42km、フル・マラソンの距離になりまし た。時間は目標通りの5時間半ちょうどでした。
ここからは直角三角形の一番長い斜辺を右下に向かって走りま す。

6.中間エイド

次の目標地点は48km地点にある苧麻村(ちょまむら)エイドです。 ここは中間点ということで、スタート地点で預けた着替えが届けら れています。
早くたどり着いて、さっぱりとしたTシャツに着替えたいぞ。

しかし、42kmからの6kmが今回で一番精神的には辛いところでし た。
もうちょっとのはずなのだが、と思って道を曲がっても、未だエイド が見えません。未だか?
知らずにエイドを通り過ぎてしまったんじゃないだろうか(そんなこ とがあるはずはありませんが)と意味のない不安にかられた頃 に、やっと到着しました。やれやれ。

着替えを受け取り、地面は濡れていますから椅子に腰掛けてまず 靴下を取りかえました。
すると、右の靴下の甲のあたりが広範囲にピンク色に染まってい ます。
あれ?どこかから出血しているぞ。
足裏のマメはあいかわらず痛いのですが、未だ破れてはいませ ん。破れたら痛みはこの程度ではなくなります。
どこからの出血なのかが気になりましたが、もう見なかったことに して新しい靴下をはいて、そんなことはなかったことにしてしまいま した。
私は注射をされるのは恐いし、自分の身体の出血している傷など 見たら卒倒してしまいます。

Tシャツも、ゼッケンを付け替えて別のしまなみTシャツにしまし た。
濡れてびっしょりになっているアーム・ウォーマーと手袋は預け荷 物の中にしまいました。濡れていたタオルも新しいものに取りかえ ます。
これで大分さっぱりしました。

このエイドは、唯一おにぎりやだんご汁のサービスがあります。
私もサトウキビ・ジュースを飲んで(これはこってりと甘くてとても美 味しいものでした)、おにぎりを食べます。
このエイドでの休憩は10分ぐらいにする予定だったのですが、や はり20分も過ごしてしまいました。
さて、あと52kmか。ふ〜っ。

7.〜60km

中間点エイドから走り始めてまもなく50km地点通過。時間は7時 間ちょうどと、目標通りでした。
ただこの辺りから身体が辛くなってきました。
足の裏のまめは痛いのですが、太股などはまだそれほど痛くなく て、痛みは局所的、表面的で我慢できる範囲内です。
ただ、全身がだるいのです。脱水にならないように各エイドで水分 は補給しているし、塩もなめて塩飴もなめています。
なんでこんなにだるいのかなあ。

なんの運動もしたこともなかった私がジョギングを始めて15年あま りが経ちます。
一生に一度でいいからと思って走ったフル・マラソンを完走したの は10年前でした。100kmウルトラを初めて完走できたのは3年前、 還暦の年でした。
さすがに肉体的には衰えてきています。ジョグをしても回復に時 間がかかるようになってきました。
実は、ウルトラ・マラソンへのチャレンジは、完走できても完走でき なくても、今回を最後にしようと思いながらの今回の参加です。
最後なのだから完走で締めくくりたいな、と言う気持ちと、60kmま で走ったらもう自分を許せるかな、という弱気の気持ちが交叉して きます。

50kmを過ぎたら、そこからしばらくは5kmを45分の設定としていま した。
で、よろよろとながら、60km地点を8時間25分で通過できました。
残り40kmに7時間35分が残っています。ん〜、まだイケテルなあ。 この調子ならなんとか時間内完走できてしまいそうだなあ。
ここまで来たら、やっぱり行ってしまおうか!

8.〜70km

この大会のエイドはおよそ5kmごとで、水分の他には、バナナ、オ レンジ、パイナップルの缶詰、ロールケーキ、飴、梅干しなどが置 いてあります。あとところどころではコーラを出してくれました。
パイナップルが甘くて美味しかったし、ロールケーキのクリームも 甘くて元気が出そうでした。
エイドの方たちも大変です。
とにかく休みなく吹きつける強風の中で走者を待ってくれていま す。もう感謝あるのみです。

しかし、ウルトラも後半になってくると、エイドでの水分補給以外に もジュースが欲しくなります。
この大会のルートはとにかく吹きさらしの畑の中が大半です。です から肝心の自販機がほとんどありません。
経験者のTさんやUさんにも、もしジュースが欲しくなったら見つけ た最初の自販機で買わないと駄目ですよ、次はいつまで経っても ありませんから、と聞かされていました。

で、見つけた自販機で。
本当は熱いコーン・ポタージュかおしるこが欲しかったのですが、 商品は冷えたものばかり。
しかたなく、クエン酸補給をしようということで沖縄特産のクワーサ ージュースなるものを買いました。

道端に座りこんで、やれやれと飲んでいると、後続のランナーがつ ぎつぎに通ります。
すっきりとしたフォームで走ってきた中年女性と目が合いました。
その女性は笑いながら、「美味しかとですか」と声をかけてきまし た。あの人は高知の人かな、それとも鹿児島の人なんだろうか。

少しずつ太股も痛くなってきましたが、走れないというほどではあ りません。
まがりなりにもウルトラを何回か走っていると、ウルトラは痛くて当 たり前、ということがよく判ります。
痛くないウルトラなんてないし、辛くないウルトラもありません。
出発前に趣味で通っている水彩画教室の仲間に、100kmマラソン に行ってくると言ったときに、ええっ、自虐的だなあ、と言われたこ とを苦笑いしながら思い出します。

足が痛いので、捕らぬ狸の皮勘定みたいな考え事をして気を紛ら わします。
え〜と、なんとか70kmまでの10kmを1時間半で走れば、そこでちょ うど10時間経過、残り30kmには6時間が残せる、そうすればあと は5kmに1時間ずつかかっても時間内完走できるぞ、そうなりゃ楽 勝じゃないか、云々・・・。

直角三角形の斜辺を走りきって、島の右下角に来ました。
ここからは東平安名岬という海に突きでた細長い岬道2km半を往 復します。
ちょうどその岬の入り口で、あきりんさ〜んと声をかけられました。
Uさんがにこやかに手を振っていました。「Tさんが200m前ぐらいを 走っているよ、風が強いよ。」

さて岬道に出ると両側は海で、橋の上と同じに遮るものがありま せんから、またまたの強風です。
今回は行きが追い風です。風に押されて仕方なく走らされます。 楽なんだか、楽じゃないんだか。

岬の突端には灯台があり、その近くをぐるっと回ってまた岬道を引 き返します。
このあたりで、「あきりんさ〜ん」と声をかけられて、見ると颯爽とし たTさんが手を振っていました。
元気が出るなあ。こうして仲間と出会えるので、往復コースが途中 にあるのも悪くありません。
帰りは強い向かい風。当然ながら走れるはずもありません。ただ ひたすら2km半を早足で歩きます。風に押し戻されそうになりま す。
ちなみに、この日の宮古島の最大瞬間風速は19メートル以上だっ たそうです。

岬道の途中に70km地点がありました。
時間は10時間ちょうど。ということは、60kmからの10kmを1時間半 でカバーしたことになります。
やったねえ。これで、本当に残り30kmに6時間もあるぞ。

9.〜80km

向かい風の中を歩いて、歩いて、やっと岬のつけ根へ戻ってきま した。
ここから今度は直角三角形の底辺にあたる部分を西へ走ります。

ここまでも道は上ったり下ったりのくり返しでしたが、ここからはい よいよジェットコースターのようなコースになりました。
小豆島の大会で、島のコースというのは平坦ではないことは知っ ていましたが、それにしても勾配には限度というものがあるだろ う、と文句を言いたくなります。

大会案内には、コースの最大高低差70メートル、とありました。
毎年参加している「加茂郷フル・マラソン」の高低差は350メートル ですから、実は、なあんだと軽く思っていたのです。
しかし、泣けました。際限なく上っては下ります。
いい加減にしてくれいっ!

上りは、あたりには山も高い建物もありませんから、急な道を上り きった向こうには空しかありません。空に向かって上っていきま す。
下りは、海へ向かってまっしぐらに下ります。
しかも強風が吹き荒れています。

一番辛かったのは、追い風での下りでした。
普段だったら、追い風の下りと言えばこんなに嬉しいことはないの ですが、今日ばかりは下りの勾配がきつすぎて、ズキンズキンと 太股に響きます。
しかも強い追い風だと、かなり踏ん張らないと前に転びそうになり ます。
転げ落ちないように痛い太股で必死に踏ん張りながら坂を下りま す。

でも、もちろん向かい風の急な上りも辛い。とても走れません。
ということで、追い風の上り坂、これが足にとっては一番楽でした。
75km過ぎの辺りでは、沖縄電力が風力発電をしている横を走りま した。風力発電をするぐらいの風が吹いているところかよ、ちぇっ。

いよいよ足にきています。
80km地点通過が11時間40分。70kmからの10kmは、ついに5kmに 50分がかかるようになってきました。
自分では健闘しているつもりなんだがなあ。
このあとどれだけ減速するのか、判らなくなってきました。
それに不安だったのは、最後の最後に待っている来間大橋です。 この橋も途中がかなり高くなっているから、みんな歩いているよ、 と聞いていました。
今日はそれに加えてのこの強風です。いったいどれだけ時間をロ スするのだろう、と不安が募ります。

10.〜90km

なんとかちょっとでも走って時間を貯金しておこう、と思います。で も、走れないんだよなあ。
後ろから来た軽い足どりの若い女性が、ゆっくりと追い越しなが ら、ふぁいと!と声をかけてくれました。まだ余裕があるひとだな あ。
その女性は3人連れのようで、あとの2人の男女は私と同じぐらい にへばっている様子です。
くだんの元気な女性が2人に必死に声をかけながら歩調を合わせ ている感じでした。

85km過ぎにドイツ村という観光施設があります。
ここは翌日の「宮古島ワイドー100kmマラソン」の大会会場になっ ているところです。ワイドーはここを起点として、今日とまったく同じ コースを走るのです。
驚くべきことは、今日の参加者のなかに、明日もまた100kmを走る 人が何人もいるということです。
その人たちによれば、せっかく宮古島まで来たんだからいっぱい 楽しまなくちゃ損でしょ、ということらしいのだが、そんなの、人間業 じゃないよなあ。

この辺りから次第に薄暗くなり始めました。
ポーチからまたライトを取り出し、ポケッタブルのウィンド・ブレーカ ーも着込みます。薄手のものですが寒さが大分違います。

あっという間に暗くなりました。
あたりには街灯もなく、真っ暗な中を走ります。風の冷たさもさらに 厳しくなってきました。
前後に走っている人の姿も見えにくくなり、遠くでライトがちらちら しているのが見えるだけです。コースが正しいのかどうかも判りに くくなってきています。
コースの曲がり角には赤い矢印の標識が取り付けられ、点滅ライ トが付いています。これだけは見落とさないようにしなくては。

真っ暗な十字路にきました。
一人の男性が立ち止まっていて、ここは直進でいいんですかね? と話しかけてきました。しかし、聞かれても私にもわかりません。曲 がるようにの指示がありませんから直進でいいんじゃないです か、と無責任な返事です。
とそこへ、たったったと軽快に走ってきた人がいます。で、そのまま まっすぐに行ってしまいました。
ゼッケンをみると一桁Noのランナーです。ということは申し込みが とても早かった人だということになります。このコースのベテランさ んに違いありません。
ということで、われわれも直進を選びました。
まもなく90kmの表示板があり、コースが正しいことが判りました。 やれやれ。
時間は13時間30分。残り10kmに2時間半があります。ふ〜っ。

11.ゴールまで

そこから何回か角を曲がり、93kmぐらいからいよいよ最後の難 関、1400メートルの来間大橋にさしかかりました。
ここもすごい風です。行きが追い風、帰りが向かい風です。

橋はかなり高く、水面からの距離もあるのですが、激しい風にあ おられて細かい波しぶきが雨のように降ってきます。
この橋の上は往復するランナーがいるので、かなり賑やかでし た。風におされて太ももの痛さを我慢して走ります。

橋を渡りきって来間島の中を少しだけ回ります。
96km地点に最後のエイドです。山陰で風が穏やかなのでほっとし ます。
それに残りの距離も4kmとなり、制限時間までにも余裕があるの で、このエイドでは皆くつろいだ雰囲気です。

嬉しいことに、このエイドには温かい野菜スープがありました。
これは美味しかったですね。お代わりもいただきました。

さて、橋の帰り。向かい風で全く走るどころではありません。風に あおられると後ずさりしそうになります。
前屈みの姿勢でひたすら1400メートルを歩きました。

橋を戻ってきて、真っ暗な道を少し行ったところに、残り2kmのうれ しい表示。
時間はまだ1時間と数分が残っています。これは楽勝となりまし た。
ここで不甲斐ないのが私の性格。あとはずっと歩いてしまいまし た。少しは走ればいいのに。
残り1kmの表示。いよいよだなあ。

東急ホテルの敷地に戻ってきてあと500mぐらい。
このあたりからは走り終わった人やスタッフがしきりに声をかけて くれて応援してくれます。おかえりなさ〜い! これは走らなけれ ばいけません。
ゴールでは一人一人の写真撮影をしてくれていますから、ポーズ を決めなくてはいけません。右手を挙げてのガッツ・ポーズでゴー ルしました。
タイムは15時間14分でした。

走り終わってサトウキビ・ジュースをもらって飲みます。いやあ、美 味しい!
しかし、寒さで全身ががたがたと震えます。走り終わっての気の緩 みか、吐き気もしてきました。これまでなんとか保ってきた自律神 経の調子が急に狂ってきたような感じです。
こりゃあ、いかん。
預けてあった荷物を受けとり、とにかく温かい風呂へ入ろうと、ふ らふらとホテル前に並んでいたタクシーでホテルへ戻りました。や れやれ。

12.終わりに

一晩爆睡をして、翌日は体調も戻りました。ただ足は痛くてあまり 歩けないので、レンタカーを借りて島内ドライブをしました。
ほとんどの観光名所が海に沿って散在していますから、必然的に ドライブは昨日、走った道路を行くことになります。
ああ、このあたりは未だ暗いうちに通ったんだった、このあたりで 夜が明けてきたんだった・・・。
やはり今日も風は強くて、東名前岬では車から降りたとたんに身 体が吹き飛ばされそうになりました。
今回の完走率は72%ということでした。4人に1人以上がリタイアし たことになります。
それを思えば、よくやったな、と、あらためて自画自賛。
やっぱり、ウルトラは楽しかったな、あの辛さが好いんだな、と訳 のわからない感慨に浸ります。

(後日談)
今年、海宝さんの「しまなみウルトラ遠足」が3年ぶりに復活開催さ れるとのことです。
宮古島遠足で最後のウルトラ・マラソン参加にするはずだったの ですが、
・・・あれ、なんで「しまなみ」の申し込み画面を開いているんだ?
  あれ、なんでエンター・キーを押しているんだ・・・?



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