四万十川60kmの部・2006

1.スタートまで

去年は仕事と重なってしまって来れなかった四万十川ウルトラマ ラソンへ、今年はやってきました。春の「しまなみ遠足」が80km地 点でのリタイアだったので、意気消沈して、今回は60kmの部への 参加です。
1週間前の夜のジョギングで転倒をした際にできた膝の傷は未だ 治りきっていません。
皮が張っておらず、じくじくしており、足を曲げ伸ばしをすると痛み ます。

今回も宿は中村駅前のビジネス・ホテルです。
スタート地点の鯉のぼり公園まで、申し込んでおいたバスで1時間 あまりの距離を送ってもらいます。
今年の60kmの部の参加者は300人でした。
川風が気持ちよく、少し暑いぐらいの良いお天気です。
スタートは10時ですから着替えをしてゴール地点への荷物を預け てしまうと何もする事がありません。大きなビニールシートが何枚 も広げられています。そこで仮眠をとりました。意外とぐっすりと眠 ることができました。

2.いよいよスタート

10時にスタートです。
しばらく走って四万十川を対岸に渡ると、40km前から走ってきた 100kmの部の人たちと合流します。
まあ、その人たちの早いこと、すでにフルマラソンに近い距離を走 ってきたとはとても思えません。
 
走り始めて間もなく、膝の傷口に貼ってあった絆創膏をはがしまし た。四万十川の川風に当てたほうが傷の治りも良いだろうと思っ たわけです。
膝上までのジョギングパンツですから傷が擦れることもありませ ん。
オゾンが豊富な四万十川の空気にあたり、ゴールする頃には傷 はすっかり良くなっていました(?)。

この大会はすばらしいことに1kmごとの表示が、最初から最後ま であります。
100本も表示を立てるなんて、それだけでもすごい主催者の努力 だと感心します。

この大会の60kmの制限時間は9時間半です。ま、これはいけるで しょう。
今回は、前回に3分足りなかった8時間切を目標としていました。そ のためにはエイド休憩も含めて1kmを8分平均で行けばよいわけ です。
ゆっくりで良いやと、周りの人にどんどん抜かれながら走ります。
それなのに時計を見ると1km7分を切るぐらいの早さです。私の目 論見からは少し早過ぎるぞ。 

3.22kmまで

しかし、今年は暑い。四万十川マラソンでこんなに暑いのは始め てでした。この日の最高気温は28度まで上がったとのことでした。

15km地点あたりで、有名な半家沈下橋になります。(沈下橋とは 手すりや欄干のない橋で、水かさが増したときには水没するよう になっている橋です。)
良い天気です。川は悠々と流れています。

このコースは川に沿っての細かい上り下りが結構あります。緩や かな坂を上っていくと、眼下に四万十川が遠望できます。
応援の小母さんが「頑張って!」と声を掛けてくれます。
「しんどくて折角の景色を見る余裕もないよお」と笑いながら応え ると、「あら、もったいないねえ」と小母さん。
・・・その通りなのですが・・・。

このあたりから台風による山崩れで道路が通行不能になっている 箇所があるということで、これまでのコースとは変更になっていま した。
いつもは川の左岸を走るのですが、右岸を走ります。
左岸は山陰になってひんやりするぐらいの場所なのですが、今回 は日差しがまともに指しています。暑い。
おまけに、本来のコースよりは勾配が強い坂越えが一つ増えてい るとのことでした。 

4.カヌーの館あたり

22km地点のカヌーの館が遠くに見えてきました。
今年はいつもとは違って対岸に見えます。ということは、橋を渡ら ないとたどり着けないのですが、その橋はカヌーの館を少し通りす ぎたところにあり、戻らなくてはならないのでした。
ほんのちょっとの距離なのですが、ものすごく損をしたような気持 ちになりました。
せこいなあ、と自分自身を思います。
萩往還240kmの部の完走記などで、夜中に道を間違えて5kmほど 戻ってコースに復帰した、なんて事が書いてあります。
コース間違えに気づいたときの落胆はいかばかりかと思います。 自分だったらすっかり自棄になるんじゃないかなあと思ってしまい ます。

カヌーの館の芝生で短い休憩をとります。
ウエストポーチに入れて置いた「膝○単」というテープを膝に貼り ました。少しは違うのだろうか。
あとはこの日のために通販で購入しておいたアス○ート・ソルトを 舐めます。要するにミネラルを添加して粒状にした塩です。少しは 違うのだろうか。
今年も「暑くなっています。十分に水分を補給して出発してくださ い」と繰り返し放送しています。 

5.30kmを過ぎて

岩間沈下橋のあたりで半分の30kmとなります。時間は4時間少し 前です。
思っていたよりも疲れています。この疲れようでの後半を考える と、8時間切りは難しいかな。
自販機を見つけました。
甘い飲み物が欲しいぞ、ということでオレンジジュースを飲みま す。本当はネクターのようなものが飲みたかったのですが、ありま せんでした。

35km地点は緩やかな登り坂です。疲れが溜まってきたなという感 じです。
すると、道路の向かいから、あきりんさ〜ん、頑張ってくださ〜い、 と声がかかりました。
あれ、と思って見ると参加者の一覧表を片手にしたご婦人でした。 ゼッケン番号からさがした名前を呼んで応援してくれているのでし た。
これは嬉しいものでした。少し元気が戻って走るスピードがアップ しました。

 ついにやってきました、40km地点です。
そうです、一昨年の100kmの部のときに時間関門にかかりリタイア をした地点です。
60kmの部では40km関門にもなっているのですが、まあ、これは全 く問題なく通過しました。

6.フルマラソンの距離を過ぎて

42km地点、時間は5時間半ちょっとです。
だいたいこれまでの3回のウルトラマラソンと同じ時間です。同じ時 間ですが、疲れようとしては「しまなみ遠足」に比べればましです。
しかし、これまでの2回の四万十川に比べると一番疲れています。 やはり暑さのせいかなあと考えます。

またまた自動販売機を発見。
コーラのミニ缶を飲もうと思ったら売り切れでした。みんな考えるこ とは一緒だな。で、またもやオレンジジュースです。甘味が伝わっ ていきます。
と、販売機の傍らに立っていた50歳ぐらいの中年女性がにこやか に話しかけした。
済みませんが100円貸していただけませんか。
聞くと、財布を持っているご主人が遅れてしまってジュースを買お うと思って待っているのだがなかなか来ないとのこと。
どうぞどうぞ、100円のミニ缶は売り切れですよ、と120円をプレゼ ントしました。 

50km地点あたりは緩やかな上り坂でした。疲れてきた足には堪え ます。
痛くはないのですが重く、自分の足ではない木材を頑張って持ち 上げているといった感じです。

このあたりで同じぐらいの年配の方が追いついてきました。
その方は呼吸が非常に苦しそうで、ぜいぜいと言っています。しか し、足取りはしっかりしているのです。
よし、負けないぞ、と自分を奮い立たせます。
その方と前になり後ろになり、代わるがわる引っ張り合うような形 になって5kmぐらいを走りました。
おかげで坂道を歩くこともなく乗り切れました。
やがてその方はつつーっと山陰にコースアウト、おそらく男性の特 権を発揮しにいったのでしょう。
残念ながら、その後、ゴールまでその方と再会することはありませ んでした。 

7.いよいよゴール

55km地点で狭い最後の山道へ入ります。
このあたりで急に日が翳って薄暗くなってきます。今年も山道の曲 がり角には自家発電機が置かれていて、道を照らしてくれていま した。運営の方々に感謝です。

58kmあたりで山を下りてきて、やっと町へ入ってきました。もうすっ かり暗くなっています。
四万十川のコースは町に入ってからもちょっとした上り坂や下り坂 が続きます。これは辛い。
でも応援の方が並んで、口々に、お疲れさま、お帰りなさい、と声 をかけてくれますから、歩くわけにも行きません。
エイドで渡された発光スティックを片手にもって、ありがとう、あり がとう、と叫びながら走ります。子ども達とハイタッチをします。 

いくつかの角を曲がって、いよいよ中村中学校のグランドへ走りこ みます。
グランドは煌々と照らされて真昼のようです。設置された大きな画 面にランナーの姿が映されています。
ゴールをする一人一人の名前をマイクが呼んでくれています。
この大会の完走証には、完走タイムと一緒にゴール時の写真が 印刷されます。
すぐ前の人と重なりそうだったので少し調節をして前が空いてから 両手をあげてゴールしました。

時間は8時間6分でした。
ねらっていた8時間切りはできませんでした。前回の記録にも3分 足りませんでした。
まあ、今年は暑かったし、坂もひとつ増えたし、3年分の歳もとった し、こんなところかな、と言う自己評価です。 

ただ、肝腎の点がありました。
今回の60km走には、8時間で60kmを走り終えたとして、そのあと に40kmを走る余力を残せているかと言う自分を試す意味合いが あったのです。
答えは「否」でした。
もう60kmでいっぱいいっぱいでした。私にとって100kmはやはりと てつもない距離だということが実感できました。

8.おわりに

数日して、100kmマラソンを何度も完走しているSさんから届いた お祝いメールには、
「おめでとう、もう60kmは余裕の完走ですね、あとフルマラソン1本 だけの距離なんだけどなあ」
とありました。
そう、残されたその「フルマラソン1本だけ」の距離がとてつもなく 長いのですよ。



トップへ
戻る
前へ
次へ