雨のタートル・マラソン 2006

 ホノルル・マラソンを2週間後にひかえた小豆島タートル・マラソ ンです。
 例年、ホノルル前の調整と言うことでハーフを走ることにしている のですが、今年はなんとフルを走ることになりました。
 というのも、インターネットで申し込みをしたのですが、種目を選 ぶボタンを間違えてしまったのです。送信をした瞬間に、あ、間違 えてフルを申し込んじゃった!
 さて、どうしよう。私の脚力では2週間でフル2本はとても走れま せん。
 ハーフまで走ってリタイアすることも考えたのですが、結局LSD 代わりにのんびりと行けるところまで走る、ということにしました。
 しかし、この大会の制限時間は5時間です。私のLSDの早さでは とても時間内完走は無理です。5時間だと35km〜40kmで終わりか な、というつもりでの出場です。
 
  小豆島名物の暖かいそうめんを1杯食べてスタート地点に並び ます。とにかく今年は後ろの方からスタートして、一番最後を走る ぐらいのつもりです。
 もう一つ気になるのが、雨。天気予報は小雨でしたが、幸いまだ 持っています。気温は15度と、風は少しありますが、これで雨さえ 降らなければ絶好のマラソン日和です。黒のジョギングパンツに、 上は真っ赤な四万十川シャツを着ました。これで帽子は白です。 なんという配色だ!

  5km35分ぐらいでいけばハーフで2時間半ぐらいになる計算で す。ま、それぐらいで行こうと考えていると、後方スタートでしたが それでもどんどん抜かれます。出場者は制限時間の5時間より速 く走るつもりの方ばかりですから、当然私が最後尾になるはずで す。
でも、折り返してから何人かは抜けるだろうと密かに期待したりも します。

 最初の5kmが33分です。こりゃあ少し早すぎるぜ。
 10kmが1時間6分、こんなに速く走ってはいけません、今日は LSDですよ。
  走っている間は結構暇ですから、いろいろなTシャツの背中を眺 めます。
 今回の傑作は「俺にかまうな、先に行け」と書かれたものでした。 しかし、このTシャツの人は私を抜いていってしまいました。
 サロマのシャツを着た人、今年の四万十川の長袖Tシャツを着た 人、それに一昨年のホノルルマラソン完走Tシャツを着た人もいま した。
(綿Tシャツで走るのはFOXさんだけではありませんでした)。
 その他に「中村塾」と書かれたお揃いのTシャツを着た集団が数 人ずつ走っています。全部で20人ぐらいもいたでしょうか。はて、 中村塾ってなんだろう? 小出アスリート・クラブみたいなものでも あるのだろうか? 

 この大会のエイドは5kmごとです。水、スポーツドリンク、温かい お茶のほかに、小さめのクリームパンが置いてありました。これは なかなかに美味しくてバナナやおにぎりと交互に食べていました。 あとはレモンのスライスが結構良いですね。
 コースは小豆島の海岸線の往復です。瀬戸内の島ですから、海 岸線はダイアモンドヘッドどころではないアップダウンの連続で す。

 15kmを過ぎたあたりから、ついに雨が降り始めました。幸い強い 降りではありませんが帽子のつばからは水滴が垂れるぐらいで す。
 なんとかこれぐらいの降りでおさまってくれよ、と、祈る気持ちに なります。というのも、数年前の雨降りの「萩往還70km」では、冷 たい雨に気持ちがくじけて折り返しの35km地点でリタイアしたこと があるのです(翌年の晴れた「萩往還」は完走できました)。
 このくらいの雨だったら、汗をかいて濡れたと思えばいいや、と 自分に言い聞かせます。

 そうは言っても、だんだん冷えてきます。海からの向かい風が吹 き付けると寒い!
 こっそりと路線バスの停留所を確かめたりします。途中でリタイ アしたときはバスに乗って帰ろうという魂胆です。ちゃんとお金も持 参しています。
 ただ過疎地の路線バスらしく本数は非常に少ないようで、滅多 にバスが通りません。この雨の中でバスを待つのも辛いよなあ、 と消極的なことを考えます。

 折り返しはちょうど2時間30分でした。折り返しで確認すると、私 の後ろは20人ほどでした。どうせ後半は遅くなるから、やはり制限 時間内の完走は厳しいな、と考えます。
 しかし、前半を押さえて走ったせいか、後半になってもそれほど 辛くありません。
 前半は無理しないで走った方が後半も楽しく走れるな、というこ とは、新しい発見でした。いつもは、後半は辛くなってタイムが落ち るから前半は少しがんばって走っておこう、と考えていたのです。 その結果、折り返しすぎてからがたんと疲れが出て、25kmぐらい からは、辛い、もう嫌だよ、歩きたいよぉ、と考えながら走るのが常 でした。
 今回は30kmぐらいになっても結構余裕が残っていたのです。
 
 ところどころに私設エイドも出ています。小雨の中をありがとうご ざいます。
 傘を差した小学生がざるを持って立っています。小さく切った焼 き芋を載せていました。
これはもらわなくてはいけませんね。ただ、芋なのでお茶がないと 喉に詰まりそうでした。

 このあたりで併走しはじめた方が、私の真っ赤なTシャツを見て、 四万十は100kmですか、60kmですか、と話しかけてきました。い や、60kmです、100kmは80km関門で駄目でした、と答えます。そ の方は昨年60kmが完走できたので、今年は100kmに出て見事完 走したとのことでした。
 今年は会話をしながら走れるぐらいの余裕があり、お互いが参 加したいろいろな大会の話をしながら2kmぐらいを一緒に走りまし た。
 やがてゆっくりと走っているグループに追いつき、仲間です、じゃ あ、ここで失礼します、と言ってその方は遅れていきました。
 かなり遅い人たちや歩いたりしている人たちが増えてきました。 その方たちをどんどんと抜いていきます。
 うむ、こう言ってはなんだが、これもなかなか気分の良いものだ な。

 残り10kmで残り時間が1時間15分。こりゃ、制限時間内に帰れる かもしれないなと本気で思いはじめました。
 しかし、雨はかなり激しくなってきました。波止場に沿って走って いると、風は横から容赦なく吹き付け、あおられた雨が顔に痛い ほどです。

 残り2kmの表示が見えました。しばらく前から前になり後ろになり 走っていた丸坊主頭の青年が「やったー!」と声をあげながらガッ ツポーズをとりました。そうです、時間は15分残っています。これな ら時間内完走に1km7分半で十分に間に合います。
 このあたりまでくると歩いている人が急に増えました。私は(なん と)一度も歩くこともなく走っているので、ごぼう抜き状態です。追 い抜きながら思います、ここで歩いていると制限時間は厳しいで すよ、がんばって下さいよ。

 ついにゴール!。
 制限時間までには4分が残っていました。ありゃあ、本当に制限 時間内に走れちゃったよ、と言う感じでした。
 数年前までの私のフル・マラソンは、途中で歩かない、5時間以 内の完走、というのが二大目標でしたが、どちらもあっさりとクリア してしまいました。
 身体は冷え切っています。椅子に座って凍える手で靴からチッ プをはずします。
 会場の放送が、制限時間まであと1分です、がんばって下さい、 と叫んでいます。ぎりぎりのランナーが必死になって駆け込んでき ます。
 残り時間の秒読みがはじまりました。まだランナーが次々に帰っ てきています。5時間ちょうどで合図のピストルが鳴りました。その 時にも、ゴールライン寸前の最期の直線コースに2人のランナー がいたのです。会場からため息が漏れました。

 こうして雨に濡れたタートル・マラソンは終わりました。
 この大会には無料の温泉券が付いています。もちろん入りに行 きました。熱めの温泉が冷え切った身体にたまりませんなあ。
 帰宅してから、濡れものを入れたビニール袋を更衣場に忘れて きたことを気が付きました。ホテルに電話をしました。これこれしか じかで忘れ物はなかったでしょうか。親切なフロントの方で、はい、 中にはどんなものが入っていましたでしょうか。濡れた黒のジョギ ングパンツに、真っ赤なTシャツに・・・。
 着払いで送ってもらうことにしました。しかし、ホテルの人も連絡 がなかったら果たして処分してしまって良いものやら、困っただろう なあ。
 さて、あと2週間で足の疲れはとれるでしょうか?



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