未刊詩編
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心から逃げる男
心ならずも
おぬしを斬らねばならぬ 許してくれ
そう叫びながら
顔面蒼白の若武者がこちらへ向かってくる
心になんかならなくたっていいのに
どうせそのへんのスーパーでは
一山いくらで売っているのだし
でもとりあえずは
逃げなくてはならない
方角をまちがえて
三途の川へ来てしまったのではないだろうな
いや ご安心めされい
おぬしはここで斬られることになっている
そのように心得てくだされ
やはり心がいるのか
あの角のスーパーでは
いくらぐらいで売っているのかご存じですか
心まで追う男
心してかかられい
かしこまった
心するための修行は充分におこなってきた
滝に打たれ
蛋白質もたっぷりととる毎日だった
哀しくないといえば嘘になるけれど
心をするのは
足裏の硬い部分をヤスリで削るようなことだ
蛋白質といえばミルクセーキだ
それなのに
ミキサーが壊れてつくれないっていわれる
わたしは嫌われているのだろうか
いや それは心得違いというもの
密命を帯びた若武者に感謝こそすれ
誰が嫌ったりするものか
ていねいに削りすぎて心が折れる
代わりを角のスーパーで買ってこなくては
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