ラン&ウォーク in 乗鞍60km

この大会の一番の特徴は、記録を狙ったりするような大会ではな く、本当に自分が楽しめればよい、と言う趣旨であることです。
コースは1周12kmの周回ですが、何周で止めても良いですよ、記 録も順位も取りませんよ、自分で終了ですと言えばそれでゴール ですよ、ということで、あくまでも楽しく1日を過ごすと言うのが目的 です。

毎年、雨が降ることの多い大会と言うことでしたが、今回は1日気 持ちの良い天候でした。カウベルの合図で午前6時にスタートで す。
スタートしてまずびっくり、前半の「山道コース」ですが、まず走る のは不可能な道です。
なにしろ一人ずつしか通れないような山道や木組みの階段の上り 下りの連続です。木の根やころがっている石にも注意しないとい けません。
なるほど、ラン&ウォーク大会というはずだ、これはマラソンでは なくてマラニックなんだと納得しました。

何kmも歩かないうちに汗がびっしょりになります。
そのあたりに善五郎滝があり、滝壺からの飛沫が天然シャワーの ように舞ってきて気持ちよいのです。
膝ががくがくになりながら樹林を抜けると、ぽかっと視野が開けて 牛溜池などの池が何カ所かあり、乗鞍岳を水面に映したりしてい ます。

5kmほどの厳しい「山道コース」が終わると不意に一ノ瀬園地に出 て、ここが素晴らしい場所でした。
湿地帯だったところに小川が流れ、白樺が生え、遠くには山並 み、これぞ信州、これぞ高原、といった中を走ります。
併走していた人に思わず「これは素晴らしいですね」と話しかける と、「もう最高でしょう、これがあるので毎年来ているのです」とのこ とでした。
ここでBエイドに到着します。

日本一と自慢するエイドは2カ所、スタート・ゴール地点を兼ねたA エイドと、途中のBエイドがあります。
コースは8字状になっており、まずAからスタートして「山道コース」 の5.5kmを経てBへ。そこから「牧草地コース」の5kmをループして きて再びBへ。「自転車道コース」1.5kmを走ってAに戻って1周で す。
エイドが充実しているとのことでしたので、今回は飲み物も食料も 何も持たずに走り(歩き)ました。以下のごとく、全く困ることはあり ませんでした。

始めの1周目ぐらいまではコーヒー、紅茶、お茶、スポーツドリンク などの各種飲み物、、それにキウイ、バナナ、オレンジ、パイナッ プルといった果物程度でした。
その後、周回を重ねるうちに、次第に種類が増えてきました。
各種サンドイッチ、生クリームを載せたシフォン・ケーキ、いろいろ なゼリー、海苔で野沢菜を巻いたもの、クッキー、特製味噌につけ る野菜スティック、手打ちの信州そば、スタッフが山で取ってきたと いう筍のような山菜、などなど、ほとんどすべて手製です。
やがてフルーツポンチが出るわ、メロンが出るわ、スイカが出る わ、炭で焼いた岩魚が出るわ、トウモロコシが出るわ、山菜おこわ が出るわ、サンゲタンがでるわ、コンソメ・スープが出るわ、何回も エイドを通りますから、スタッフも顔なじみになり、今度はこれが出 来ているよ、と出してくれます。「さあ、これからメロンを切るよ」な どと言われると、なかなかエイドを出発できなくなりました。
かき氷も注文すると作ってくれます。売店のソフトクリームもゼッケ ンを見せるとただでした。
あと、何がありましたかね、私はほとんど全部を食べました。エイド へ戻ってくるのが楽しみでした。
「これを飲んだら1周分の元気が出るよ」と言ってニンニク風味の そば湯も飲まされました(笑)。

Bエイドを出てからは「牧草地コース」です。
草原をわたる木道や、牛の放牧場を走ります。道はほぼ平坦です が、草に足を取られたりして、結構、足は重く感じます。
放牧場では足下に気を付けないと、新鮮な牛の糞が草むらに隠 れています。私は牛が怖いので、行く手で牛が草を食べていると 草原を遠回りしたりしました。
林の中の道を走り、水芭蕉の群生地をまわり、キャンプ場を抜け ると、また一ノ瀬園地に戻ってきます。
またもや、これぞ乗鞍高原、これぞ最高!といった気持ちで走りま す。小川の流れに沿った緩やかな下りになっているので、足も軽 いのです。

2回目のBエイドを過ぎると、あとは舗装された(なあんだ、つまら ない)自転車道を1.5km走ってAエイドに戻ります。

1周目はとにかくコースの珍しさに気を取られているうちに終わり ました。普段のちゃんとした道しか走った事が無い者にとっては、 新鮮な楽しみでした。
2周目、そうか、ここを抜けると次はこんな場所だったな、と考えた りしています。
普段はとりとめもないことを考えながら走っているのですが、とに かく今回は足元が悪いので、それどころではありませんでした。
2回ほど、転がっていた石や木の根を越えるときにつまずいて捻 挫しそうになりました。あそこで足くびを捻っていたら終わりだった な。
池の周りの木道などは、右回りでも左回りでも好きな方をどうぞ、 となっています。周回ごとに違う方を走りました。

周回コースは飽きるのではないかなとも思っていたのですが、実 際にはそんなことはありませんでした。
なにせコースが変化に富んでいます。一の瀬園地や牧草地帯は1 回走っただけで終わってしまうのは勿体ないと言うぐらいでした。

3周を終えてAエイドに戻ると、2周目ぐらいで一緒に走っていたお じさんが、もうさっぱりとした顔をしています。
「おおい、2周で一足先に失礼するわな」
ありゃあ、私なんかよりよっぽど早そうな感じだったのに。もう温泉 にも入ってきたところだな。

4周目の「山道コース」、足は痛くないのですが、左足の親趾の爪 が痛くなってきました。
おそらく靴が少しきついのでしょう。それに加えて、急な下りでは 足先に力が負担がかかります。まずいな、靴のつま先部分だけ切 り取ってしまおうかな、などと考えます。
終わってから見ると、案の定、左足の爪が2つ死んでいました。

「牧草地コース」に入り、これでフルマラソンの距離をついに越えた ぞ、と考えます。
我ながらたいしたものだ、この周回が終わればなんと48kmじゃあ ないか、と自己満足の境地です。

4周目が終わってAエイドにたどり着くと、次第に人の数が減って います。すでに5周を終わった人もいれば、3〜4周で終わる人もい るわけです。
膝にかなり来ていますが、足の痛みはほとんどありません。よし、 いける!と5周目を走り始めると、座り込んでいたおじさんが「お ー、もう1周行くのか、頑張れよ」と声を掛けてくれます。
前半の「山道コース」を登り始めると、さすがに膝に力が入りませ ん。手で膝を押すようにして段々を登ります。

急な下りの坂道に差し掛かったときに後ろから追いついてきた青 年が「僕たちが最後ですかね?」と話しかけてきました。制限時間 の終了まで2時間を切っていましたから、もうそんなに後ろに残っ ているはずがありません。
「そうかもしれませんね」と答えているうちに、その青年は私を追い 越して行ってしまいました。
あれ、これはいかん、これでは私が最後尾ではないか!少しスピ ードを上げて追いかけます。
山道が終わり一の瀬園地に出ました。平坦になったので元気が 戻り、結構(自分では)軽やかに走り始めました。先ほどの青年は 平地になっても歩き続けていたので、簡単に追い抜いてしまいま した(笑)。

やっとBエイドに着きます。もうエイドに回って來る人も減ってきて います。
エイドのスタッフに、「もう一度回ってくるから、未だ片付けないで 下さいよ」と言うと、「4時までは待っているから大丈夫だよ」と励ま されました。
白樺の木立の中を抜け、牧草地を抜けながら、ああ、これで最終 周回なんだ、と感無量でした。

もう一度Bエイドに戻り、さあ、残りはゴールまでの自転車道の1. 5kmだけになりました。
エイドを出発するときに、スタッフの人たちが「ウイニング・ランだ ね」と言って、ラッパを鳴らしておもちゃの太鼓を叩いて送り出して くれました。

軽い上り下りはありますが舗装道ですから走るのにはそれほど困 りません。
ついに戻ってきました、子供たちがゴールテープを持って待ってく れてます。「ゼッケン109番、磯村さんが余裕の足取りでゴールで す」とハンド・マイクが叫んでいます(本当は、余裕ではないんです が・・・)。
制限時間までは約20分が残っていました。ちなみに、私の後に7 〜8人の方がゴールしました。

これで私の初60km挑戦記は終わりです。
「完走」と言うのもおこごましいような内容ですが、自分としては、と にかく60kmという距離をクリアしたということで満足しています。
それにしても、フルマラソンの距離であれほど足が痛くなるのに、 今回は最後までそれほど痛くならなかったのは不思議です。
前半の山道部分では走れずにやむを得ず歩いたのが、おそらく 足を温存できた一番の理由だと思います。
とすると、ウルトラの場合、私程度の脚力だったら、歩きを有効に 取り入れる必要があると言うことになります。問題は、それで制限 時間に間に合うかと言うことになります。
う〜む、ウルトラへの道は遠い!



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