|
はじめに
初めてのシドニー・マラソンです。
この時期のオーストラリアは桜が咲く前の初春で、セーターの準
備をするようにとどのガイドブックにも書いてあります。しかし、空
港へ降り立ってみると、なんと暑い。30度を超える暑さでした。
個人申し込みをしていましたからサーキュラーキーに設置されて
いる大会テントにゼッケンをもらいに行きました。小さなテント2張
りでそれほど混雑もしていません。いくつかのメーカーがブースを
出していましたが、大会記念グッズはロゴが入っている帽子だけ
でした。
コース図ももらいましたが、なんとキロ表示が地図にはありませ
ん。ただ経路が記してあるだけです。おまけにブリッジ・ウォークと
いう10kmや、ハーフ・マラソンのコースも一緒に載っているので見
にくいことといったらありません。オーストラリア人はとにかく計画
性が無く、適当にやるというのが国民性だとのことです。
スタートまで
当日朝は3時40分に起床。よく眠れました。
おにぎりとバナナを食べて、4時40分にツワーのバスに乗ります。
今年のJTBのマラソン・ツワーは全部で15人の参加ということでし
た。しかも約半数はハーフの部の参加です。やはりホノルル・マラ
ソンに比べれば日本からの参加者は少ないです。
未だ暗い街中はすでに交通規制が始まっていました。今日は路
上駐車禁止になることは以前から布告されていたようですが、そ
れでも駐車している車があちらこちらでレッカー移動されていまし
た。シドニーの一番の繁華街がコースに含まれていますから、準
備も大変です。
街の北側にあるハーバー・ブリッジの橋脚の下の公園がスタート
地点です。
朝の気温が10度と言うことでしたが、Tシャツ1枚になると肌寒い感
じです。荷物預かりは大会オフィシャルのものがスタート直前まで
受け付けていました。と言っても、大型トラックの自分の番号の付
いた荷台のところに放り投げるといったやりかたなのですが、簡単
で、これで十分です。
仮設トイレに行ってみると並んでいるのはほとんど女性ばかりで
す。見るとフェンスで囲まれた男子の小用トイレ区画が別にありま
した。直径1m足らずの円形を壁で4つに区切り、排泄物を真ん中
に集めるという形の簡易トイレが何十と並んでいます。場所も取ら
ずに設置できて、一度に4人が利用できますから回転も速く、男性
は全く行列もありませんでした。
〜10km
ハーフマラソンが6時20分にスタートしていきました。そうか、それ
でツワーの迎えのバスの時間が早かったんだ。フルだけならもう1
時間遅くても間に合うのですが・・・。
フルよりは参加者が多いハーフの人たちがいなくなると公園は急
にがらんとしました。フルは3000人ぐらいでしょうか。
ちなみに一番参加者が多いのはブリッジ・ウォークというハーバ
ー・ブリッジをわたる10kmコースで、数万人の参加です。このコー
スのスタートは8時過ぎだそうで、全く一緒にはなりませんでした。
フルは7時15分にスタートです。花火はむろん、目立ったセレモニ
ーはなく、カウントダウンもなく、いたって地味なスタートです。
橋脚下からいきなり坂を上りながら1kmほど走ってハーバー・ブリ
ッジの上に出て南に渡ります。長さ1.5kmの橋ですが、片側4車線
の8車線全部が解放されています。シドニー街中への主要幹線道
路が完全封鎖ですからかなりのものです。ただし、同じ橋の上をシ
ティ・レールという電車が通っています。時折通りすぎる電車の窓
から眺める人がいっぱいでした。海上をわたる清々しい朝の風が
気持ちよく、幸福感があふれてきます。
距離表示は、ゴールドコースト・マラソンもそうでしたが1km毎で
す。これはうれしいですね。
レベルは高い大会で、制限時間は5時間半です。オーストラリアの
人はそれだけジョギングに熱心なのでしょう。いくつかの関門もあ
り、最終関門は35kmで4時間半でした。まあ、これは心配ないでし
ょう。
ペースランナーは3時間30分、4時間、4時間15分、4時間30分と、
う〜む、レベルが高いなあ。
橋を渡り終えて最初の5kmが33分。スタート時の混雑を考えれば
まず予定どおりです。起伏の多いコースですから、私の最近の走
力からすれば5時間を切れれば良しといったところです。
ハーバー・ブリッジを渡り、マッコール岬にきます。ここはハーバー
ブリッジとオペラハウスが一緒に見えるということで有名な観光ス
ポットです。
岬の先端をぐるっと回る折り返しになっているのですが、私の後ろ
にはそれこそ数十人しかいません。おいおい、私ってこんなに遅
かったのかい? ホノルルのように後ろに何千人もいると心強い
のですが、そのうち最後尾になるんじゃないだろうかと言う不安が
わいてきます。
湾の一角にはボートハウスを備えた高級住宅があったのですが、
あのラッセル・クロウが14億円で購入したとのことでした。
このあたりで、競歩のように大きく手を振って体をねじりながら歩
いている人と相前後しました。歩いていると言っても並の早さでは
ありません。なかなか抜けません。この辺りではまだ私の方がわ
ずかに早かったので、しばらくしてなんとか抜きます。しかし、エイ
ドで歩きながら水を飲んでいると、あっさりと抜かれてしまうので
す。その人は当然ですが歩きながら水を飲んでも速さは変わらな
いのですね。結局、この人には20km辺りで抜かれて、背中が見え
ているのですが追いつけなくなりました。エイドの度に差が開き、
その後は追いつくことはありませんでした(泣)。
市街地の植民地時代に建てられた古い建物が並ぶ一帯に入って
きます。大きなハイド・パークの横を抜け、セント・メリーズ大聖堂
の前を走ります。
オックスフォード通りにはいると両側には虹色の大きな旗がずらっ
と並んでいます。虹はゲイのシンボルなのだそうで、この一帯はゲ
イの街として知られています。男性同士で手をつないで朝の散歩
をしているカップルは間違いありませんが、ただ話をしながら歩い
ている男性二人も何となくそのように見えてしまいます。
エイドは2.5km毎ぐらいにあって、とにかくしょっちゅうあります。水
とスポーツ・ドリンクです。パンフレットにはエネルギー・ジェルを置
いてあるエイドもあります、とあったので期待していたのですが、な
んことはない、甘いビーンズのことで、あまり役に立ちませんでし
た。
市街地を抜けて南東の方角に走ります。10km地点で1時間5分
と、まあ、予定通りです。この辺りではまだそれほど暑くもなく、ゆ
ったりと走れています。
黒鳥が優雅に泳ぐ池のある公園の中を走ったり、競馬場の横を
走ったり、緑の多い一帯です。建ち並ぶ家も古いものがかなり残
っており、スケッチに描きたくなる風景がいたるところにありまし
た。
〜ハーフ
道路のところどころには青い線が残っています。あのシドニー・オ
リンピックの時の正式コースに引かれた線の名残です。はじめは
ずっと残そうという意見もあったらしいのですが、線は正式の計測
コースに引かれていますので必ずしも道なりではなく、斜めに横
切ったりしているところもあって交通事故を誘発したことがあり、消
したのだそうです。全部消すのは予算がないとのことでした。青い
線が残っているところではその線に沿って走ります。高橋尚子の
気分です。
どういうわけか、このあたりでは3カ所の折り返しがあります。です
から、前後のランナーとしょっちゅうすれ違います。こちらは4時間
40分ゴールぐらいのペースで走っていますから、他の大会でした
ら十分に後ろにも人がいるはずなのですが、この大会ではやっぱ
り後ろのほうだなあ。
15kmを過ぎ、ホノルルだったらそろそろハイウェイに入るぐらいだ
な、と考えたりします。
ハーフ通過が2時間20分足らずでした。ちなみに計測は靴につけ
たチップで、スタートラインを越えたところからの計測です。
〜30km
25kmあたりで中心街に戻ってきて、一番の目抜き通りを走りま
す。昨日買い物でぶらぶらと歩き回った街並みです。
ただシドニーの街は坂の街です。渋谷で言えば道玄坂を下ったか
と思うと角をいくつか曲がって今度は文化村への坂を駆け上が
る、といった感じです。上り坂になるとがくんとスピードが落ちま
す。しかし、まだ歩いている人は誰もいません。みんな頑張ってい
るなあ。
目抜き通りなのですが、沿道には不気味なほど人がいません。店
も皆シャッターを下ろしています。交通規制のせいもあるのでしょ
うが、シドニーでは週末や祝日は閉店するところも少なくないとの
ことでした。休日の人件費が高いからだそうです。
見物や応援の人もほとんどいません。あの東京マラソンの沿道の
応援ぶりを考えると大違いです。
今度はダーリング・ハーバーというお洒落なウォーターフロントとい
った地域を走り抜けて、街の西へ向かいます。世界で2番目の水
揚げをほこるフィッシュ・マーケットの横を走ります(世界一は日本
の築地だそうです)。
緩やかな起伏が続きます。次第に暑くなってきており、この辺りで
はエイド毎に水を頭からかぶるようになりました。
30kmで3時間20分。まあ、こんなものでしょう。のんびり走っている
せいか、それほど辛くはありません。というか、辛くない程度に走
っているという、お気楽ランナーになっているのですね(笑)。
このあたりで、なんと4時間半のペースメーカーが歩き始めていま
した。おいおい。
〜ゴール
住宅街になってきました。傍らを街の中心地へ向かうトラムという
路面電車(郊外へ出ると普通の電車のような線路を走ります)の
ようなものが走っています。
34kmあたりで折り返し、再び市街地へ向かいます。シドニー・オリ
ンピックのときのゴールはここを折り返さずにもっと先まで行った
オリンピック・スタジアムでした。ですから高橋尚子選手が勝利を
確信してサングラスを投げ捨てた35km地点はこの先となり、今の
シドニー・マラソンでは走らないのでした。残念。
歩いている人が少しずつ増えてきました。私はゆっくりとですが走
り続けています。
もうじき市街地へ戻るという辺りで最終ランナーと思われる女性と
すれ違いました。新撰組の模様のはっぴを着ていましたからたぶ
ん日本人なのでしょう。ほとんど歩くようなスピードの彼女の後ろ
がすごいです。車が何台ものろのろと後を付いているのです。見
ると、大会運営車、救護車、それに距離表示のプレートを回収す
る車、道に並べていたコーンを回収する車が付いて走っているの
でした。間違いなく最終走者だな。一種、壮観です。
街へ戻り、今度はシドニー港の方へ向かいます。
39kmをすぎて湾の向こうにゴールのオペラハウスが見えてきまし
た。ホノルルで言えばカハラを抜けた辺りになるなと考えます。とこ
ろがいつまで経っても40kmの表示が見えてきません。おかしいな
あ、見落としたかなあと思いながら走りましたが、後で聞いてみる
とやはり40km以後の表示はなかったとのことでした。一番の観光
スポットなので表示板を取り付ける場所がなくて、まあ、いいや、と
いうことになったのでしょう。
この辺りはサーキュラーキーという港をめぐる観光スポットの真ん
中です。港を囲むように造られた散策用のウッドデッキを走りま
す。港の向こうのオペラハウスは眩しくパール色に輝いています。
居合わせた沢山の観光客が物珍しげに眺めて声援をしてくれま
す。
港を回りいよいよ最後のあたりは、ウッドデッキに日傘を差したオ
ープンカフェやパブが並ぶ店先の海側を走りますから、この辺りだ
けはすごい歓声です。
ゴール! 目標としていた5時間には10分あまりが残っていまし
た。
走り終わって
オペラハウス前は広いデッキになっていますが、ゴールのいろい
ろなテントなどは横の坂を上がった高台の芝生広場にあります。
靴につけていた計測チップを返し、完走記念メダルをもらいます。
このメダルを見せると完走Tシャツをくれるのですが、予め申し込
んでいたSサイズはもう残っていませんでした。仕方なくMサイズ
をもらいました。私のゴールが遅かったので品切れになったのでし
ょうが、Tシャツを作る時に申し込みサイズの希望数など数えなか
ったのでしょう。オーストラリア人の計画性のなさがこんなところに
も現れていました。
今回もツワーでしたからテントに戻り、フルーツをむさぼり食べま
す。西瓜のおいしかったことと言ったら! もちろんマッサージもし
てもらいました。このツワーでハーフを走り終えた人は引き上げた
後で、フルを走ったのは10人足らずでしたから、2人がかりでの入
念なマッサージをしてもらえました。
アシックスのブースで大会記念帽子を買いました。ただし、これは
綿100%なので走るときに被るのにはあまり適していない代物で
す。
こうしてシドニー・マラソンは終わりました。
ホノルルに比べればお祭り騒ぎのない、現地の人が開いている市
民マラソンという感じで、雰囲気はゴールドコースト・マラソンにに
ています。温度は今日は26度まで上がったということでしたが、例
年はもっと涼しいとのことでした。
この大会の一番の魅力はなんといってもコースがシドニーの観光
地巡りになっていると言うことでしょう。走っていていて飽きること
がありません。その意味では東京マラソンと似ているかもしれませ
ん。ただしアップダウンはかなりあります。特に街中はジェットコー
スターを思わせる上り下りの連続です。シドニーの街自体が坂の
街ですから、これはやむを得ません。
良い大会なのに、なぜ、ホノルルほど人気が出ないのでしょう?
不思議。
|
|
|
|
|